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2011年 04月 05日
ユング心理学に、「死と再生」というテーマがあります。今までの自分のやり方ではうまくいかなくなった時に、「今までの古い自分が死ぬことにより、新しい自分として生まれ変わる」という意味です。引きこもりや不登校、うつなどの症状は、ある意味死んだような状態であり、それを体験し乗り越えた時に新しい自分(新しい価値観や生き方を持った自分)として生まれ変わることができるのです。もちろんこれは象徴的な意味で死を体験することが重要なのですが、不幸なことに時には本当に死んでしまうこともあるのです。この体験は新しく生まれ変わるチャンスなのですが、同時にピンチ(心の危機)でもあるのです。
今回の東日本大震災では、3万人近い死者・行方不明者が出ています。多くの人々や財産、そして環境までが破壊され、まさに日常が非日常の世界になってしまった感じがあります。 今回の災害(地震と原発の事故)は、今までの災害と違った意味を持っているような気がします。マスコミ等にも、この災害を契機として新しい日本の社会や日本人の生き方を模索する発言が多く見られます。 また、最近の人とチンパンジーの遺伝子の研究によると、人類はチンパンジーに比べて510個の遺伝子が欠落しているそうです。でも、損失することにより人として進化することができたというのです。人は失うことにより進化できるのかもしれません。 被災地の人々は、多くのものを失いました。被災者の人たちの言葉や行動を見ると、悲しみや怒り、苦しさ、不安を心の中に持ちながらも、前向きな言葉や、人を気遣う言葉、行動が多く見られます。日常生活の多くのものは無くなってしまったけれど、人と人の絆は残っている、いや、いっそう強くなっている感じがします。ある被災者は「このピンチをチャンスにしなければ」と言っていました。新しい日本は、被災地の人々から始まるのかもしれません。被災地の人々が日常の生活を取り戻すとき、それは今までとは違った、人としてより進化した生活になっているに違いありません。そして、それは私たちの心にも影響を及ぼすことでしょう。私たちが被災地の人々を援助することは、同時に自分たちの生き方を考えることでもあります。 新入生が入学してきます。大学での生活が、新しい自分に成長する変容の場になるように見守っていきたいと思います。 (青栁 宏)
by kenkoshinri-bunka
| 2011-04-05 08:29
| コラム 青栁宏
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